高齢者のための免許返納ガイド｜手続き・特典・再取得まで完全解説
免許返納手続きの流れと必要書類【事前準備から当日まで完全ガイド】
高齢になり、運転に不安を感じ始めたときに選択肢として考えたいのが「運転免許の自主返納」です。しかし、いざ手続きをしようとすると「どこで？何が必要？どう進めるの？」といった疑問を持つ人も少なくありません。
ここでは、免許返納の基本的な流れと必要書類、注意点まで詳しく解説します。
① まずはどこで手続きできるのか確認する
免許返納は全国どこでもできるわけではなく、対応している窓口で手続きする必要があります。主な受付窓口は次の通りです：
- 運転免許センター（都道府県ごとに1～2か所）
- 各警察署の交通課（一部は予約制）
- 一部の交番（返納受付は不可。案内のみ）
※地域によっては平日のみ対応、時間帯制限があるため、事前に電話または各都道府県警の公式サイトで確認しましょう。
② 免許返納に必要な書類と持ち物一覧
返納手続きに必要な書類は以下の通りです：
| 持ち物・書類 | 内容 |
|---|---|
| 運転免許証（現物） | 本人確認と回収用 |
| 印鑑（認印） | 書類への押印（不要な地域もあり） |
| 本人確認書類（健康保険証など） | 返納証明書の発行時に必要 |
| 代理人が手続きする場合：委任状 | 家族等が代理で申請する場合必須 |
| 代理人の本人確認書類 | 家族が来所する場合に必要 |
※「運転経歴証明書」を同時申請する場合は、証明写真（縦3cm×横2.4cm）や申請手数料（都道府県により約1,000円前後）が必要になります。
③ 当日の手続きの流れ
ステップ1：受付窓口で申請意思を伝える
窓口で「運転免許の自主返納を希望します」と伝えます。担当者が所定の書類を用意してくれます。
ステップ2：申請書の記入
本人の署名と返納理由などを記入します。印鑑を押す欄がある場合もあります。
ステップ3：免許証の返納
記入が完了したら、運転免許証を返納します。物理的に回収され、これで正式に無効となります。
ステップ4：必要に応じて運転経歴証明書の交付申請
身分証明書として使える「運転経歴証明書」は、返納と同時に申請可能です。別日に申請することもできますが、窓口で同時に済ませた方が手間が省けます。
④ 返納完了後にもらえるもの
- 運転免許取消通知書
返納されたことを証明する書類です。後日、運転経歴証明書を取得する際にも使われます。 - 運転経歴証明書（申請した場合）
免許証の代替として、銀行・携帯契約などで本人確認書類として使えます。
⑤ 手続きの所要時間と費用
- 所要時間：20～30分ほど（窓口の混雑状況により前後）
- 運転経歴証明書の発行には別途1週間程度かかる場合があります
- 証明書の発行手数料：約1,100円前後（地域差あり）
⑥ 事前に確認すべき注意点
- 有効期限内に返納しないと証明書が発行できない
免許が期限切れになると、返納扱いにはならず、運転経歴証明書も取得できません。 - 運転免許のすべてが対象になる
普通自動車免許だけでなく、原付免許や二種免許もすべて返納となります。 - 再取得には試験が必要
返納後に「やっぱり運転したい」となっても、試験を受けて再取得する必要があるため慎重に判断しましょう。
このように、免許返納の手続きは一見シンプルですが、準備不足や勘違いで不便な思いをする人も少なくありません。事前に流れと必要書類をしっかり確認し、できれば家族の付き添いもあると安心です。
免許返納で受けられる特典や支援制度とは？【地域別の具体例つき】
運転免許を返納すると「不便になるだけ」と感じる人も多いかもしれませんが、実は多くの自治体や企業が高齢者の免許返納を支援する取り組みを行っており、さまざまな特典や補助制度が用意されています。
中には数万円相当の支援を受けられることもあるため、制度を知らずに返納するのは大きな損です。ここでは主な特典と、実際に行われている支援制度の事例を紹介します。
① 公共交通の割引・無料パスの配布
運転免許を返納すると、「移動手段が不便になるのでは」と不安に感じる方も多いですが、多くの自治体ではバスや電車などの公共交通機関の割引制度を提供しています。
主な特典内容
- 地域バスの運賃割引やフリーパス（無料乗車証）
- 市営地下鉄の割引定期券の交付
- タクシー割引券の発行
実施例
- 名古屋市：名鉄バス・市バスのフリーパス支給（要運転経歴証明書）
- 仙台市：市バス定期券の半額支給（年間最大20,000円分）
- 熊本市：タクシーチケット最大1万円分の配布
② 民間企業によるサービス特典
一部のスーパーや百貨店、飲食店などの民間企業でも、高齢者の免許返納を応援する制度が設けられています。
例：
- スーパーマーケットでの配送料半額や無料配送
- ショッピングセンターでの商品割引や特典プレゼント
- シニア対象商品の割引（電動カート・買い物カートなど）
実施例
- イトーヨーカドー：買い物補助や自宅配送の優遇措置（地域限定）
- イオンモール：身分証提示で買い物サポートサービスが一部無料
③ 交通費補助や代替移動手段の支援金
車を手放したことで移動が困難になる人のために、自治体が代替交通手段の利用を支援する補助金制度を用意しているケースもあります。
主な内容
- 電動自転車の購入費用を補助
- シルバーカーや歩行補助器具の支給
- 介護タクシー利用券の配布
実施例
- 東京都板橋区：タクシー利用券30,000円分を支給
- 福井県：電動自転車購入に2万円の補助
- 広島県尾道市：公共交通利用ポイント制度（PASPYカード）
④ 地域ポイントや電子マネー付与制度
自治体によっては、免許返納者に地域で使えるポイントや商品券、電子マネーを付与する制度も用意されています。
実施例
- 兵庫県姫路市：姫路市電子マネー「Himeca」1万円分を交付
- 長崎県佐世保市：地域商品券5,000円分を支給
- 岐阜県各務原市：市内限定利用ポイント制度で買い物サポート
⑤ 医療・介護関連のサポート連携
免許返納後は医療機関や介護施設との連携支援が提供される地域もあります。具体的には、通院送迎支援やデイサービス送迎の無料化、地域包括支援センターによる生活支援などです。
実施例
- 北海道札幌市：通院支援タクシー券（要介護認定者対象）
- 大阪市：デイサービス利用者向け移動支援制度との連携
⑥ 特典を受けるための共通条件：「運転経歴証明書」
これらの多くの特典は、単に「免許を返納した」という証明ではなく、「運転経歴証明書」の提示が条件となっています。この証明書は、運転免許を返納する際に同時申請しなければ発行されないため、特典を活用したい人は必ず一緒に申請しておきましょう。
⑦ 制度の有無・内容は自治体によって異なる
すべての自治体で同様の支援制度があるわけではありません。地域ごとに特典の有無・内容・条件が大きく異なります。一部の市区町村では何も実施していないケースもあります。
制度の確認方法
- 各市区町村の役所・福祉課・高齢福祉課に電話で問い合わせ
- 自治体の公式サイトで「免許返納 特典」などで検索
- 地元警察署・運転免許センターの窓口で案内を受ける
まとめ：特典を活用して快適な生活へ
免許返納は「不便になる」だけではなく、自治体や企業の支援を上手に活用することで、より安全かつ快適な生活が可能になります。
特典の内容は随時変更されることもあるため、返納前に情報を集めておくことで、後悔のない判断ができるでしょう。
免許返納の平均年齢は何歳くらい？
警察庁の統計によると、免許返納の平均年齢はおよそ75歳前後です。多くの場合、75歳の高齢者講習を受けた後、身体能力や認知機能に不安を感じた方が自主返納を選んでいます。
しかし、実際には70歳を超えた段階から「いつ返納すべきか」を家族や主治医と相談するケースも増えています。
免許返納で3万円もらえるって本当？
一部の自治体では、免許返納者に対して最大3万円の補助金やタクシー券などを支給しています。具体的な例として、東京都板橋区や福井県などが制度を実施しており、内容は以下のようなものです。
- タクシー乗車券（3万円分）
- 電動自転車の購入補助
- バス回数券の配布
ただし、地域によって制度の有無・金額・条件が異なるため、必ず自治体の公式サイトや窓口で確認しましょう。
免許返納して原付だけ残すことは可能？
原則として「免許返納＝すべての運転免許の取消し」となりますが、原付だけ残すことはできません。原付を運転するには原付免許が必要であり、普通免許に付随する形で保有していた人は、それも一緒に返納されます。
もし原付の運転を続けたい場合は、返納後に原付免許を再取得する手続きが必要となります。
免許返納後の身分証明として使えるもの
運転免許証を返納すると、写真付きの身分証明書がなくなって困る人も多いです。そこで活躍するのが「運転経歴証明書」です。
これは正式な公的証明書であり、以下のような用途に使えます：
- 銀行口座の開設
- 郵便物の受取
- 各種契約（携帯電話、賃貸など）
発行には返納と同時の申請が必要です。再発行はできないため、大切に保管しましょう。
免許返納を考える年齢の目安とは？
「何歳で返納すべきか？」は個人差がありますが、75歳以上になると高齢者講習と認知機能検査が義務付けられます。
この年齢を1つの判断基準として、以下のような兆候がある場合は検討しましょう：
- 運転中の判断ミスが増えた
- 駐車や車線変更が困難
- 家族から運転を心配されている
年齢ではなく「運転能力」が最も重要な判断材料です。
免許返納後に再取得できる？条件と注意点
いったん返納しても、運転免許は再取得が可能です。ただし、学科試験や実技試験を最初から受ける必要があります。
再取得に関する注意点：
- 認知機能検査に合格する必要がある（75歳以上）
- 運転免許センターでの申請が必要
- 医師の診断書を求められる場合がある
「もう一度運転が必要」となった場合でも、すぐに再取得できるとは限りませんので慎重に判断しましょう。
免許返納を代理申請できるケースと方法
本人が免許返納の手続きを行えない場合、家族や介護者による代理申請が可能です。ただし、以下の条件を満たす必要があります：
- 本人の署名・同意書
- 家族の身分証明書
- 本人の運転免許証原本
認知症の進行などで手続きが困難な場合は、あらかじめ行政書士や市区町村の相談窓口に問い合わせるとスムーズです。
免許返納のメリットとは？家族にも安心を
免許を返納することで得られる主なメリットは以下のとおりです。
- 交通事故のリスクを回避
- 家族や周囲への不安を軽減
- 経済的な負担の軽減（保険料・車検・ガソリン代）
- タクシー・バスの優待利用
高齢運転者の事故は増加傾向にあるため、自主的な返納は本人・家族双方にとって安全と安心をもたらします。
免許の期限切れと返納の違いとは？
免許返納と免許の期限切れは全く異なる手続きです。
- 免許返納：自主的に免許を取り消す正式な手続き。証明書の発行が可能。
- 期限切れ：無効状態になるだけ。身分証明としても使えない。
期限が切れた状態では「運転経歴証明書」は発行されないため、返納するなら有効期限内に手続きを行うことが重要です。
免許返納はどこでできる？警察署・免許センターの場所
免許返納は以下の場所で対応しています：
- 各都道府県の運転免許センター
- 各警察署の交通課
- 一部の交番（事前相談のみ対応）
各施設の取り扱い内容は異なるため、事前に電話やホームページで確認しましょう。
免許返納は警察署でも手続き可能？
はい、多くの警察署の交通課で免許返納の受付が可能です。ただし、平日の9:00〜17:00など時間が限られている場合が多く、土日や祝日は対応していません。
また、証明書発行までに数日かかるケースもあるため、急ぎの方は運転免許センターの利用がおすすめです。